じっと、遠くから彼を見つめる。
自分とは随分違う、何だかとても守ってやりたくなるような幼い身体をした兄を。
僕は部屋の中にいて、彼は中庭というにはあまりにも豪華な花畑にいた。
僕が見ているのも気付かず、彼は徐に手を伸ばし、おそらくはタンポポであろう黄色い花をブチリともぎ取った。
それを見て、一瞬身体が強張ったが、折角遊んでいる彼を驚かすのも偲びなく思われて、結局僕は黙って見ている事にした。
しかし、花を毟り取っては何かをし、また毟る、という行動を何度も繰り返すのを見ていると、何をしているのかが気になってきた。
彼が僕に気付くように、いつもより少しだけ音を立てながら歩いて行った。
「ねえ、ヒート兄さん。何をしているの?」
「あ、ウッド。いや、その、ちが……」
僕が怒っているとでも思ったのか、ちょっと慌てた後に口籠もってしまった。
「どうしたの? ……僕は怒ってないよ?」
「いや、そうじゃなくて……笑わない?」
いつになく歯切れの悪い兄に疑問を抱きつつも、笑わないよ、と伝えると、顔を真っ赤にして囁いてきた。
「花占い……してたの。」
よっぽどへんな顔をしていたのであろう僕に、訂正も込めて説明してくれた。
「僕ね、ウッドが僕のこと好きかな……って思ってね、花占いしてたの。そしたらね、結果が全部嫌いだったから、好きになるまで続けてたの。」
彼の説明を聞いて、僕は思わず苦笑した。
その笑顔を見咎められて、今度は僕が説明する番になった。
花占い
(「僕が君を嫌いになるわけないじゃない。」)
H22.3.7