一を殺せば一は生きる。
そんなどうでも良いフレーズが頭の中をよぎったとき、目の前には君がいた。
至極どうでも良い疑問。
「もし君が死ねば僕は生きられるって言われたら、君は死ねるかい?」
案の定、君はきょとんとして、いったいなにがいいたいの、と聞いてきた。
君は可愛いね。ずっとそのままでいてよ。
僕がそう言うと、君はますます分からないという顔になった。
ねえどうしたの。なにがいいたいの。ぼくになんていってほしいの。ねえだまってないでこたえてよ。
目を細めるだけの僕に向かって、すごく泣きそうになっている君は可愛くて、自分の兄だということを忘れそうになる。
「死ねる? 僕のために。」
頬を両の掌で挟み、泣きそうな君の顔を無理矢理こちらに向けながら聞いた。
「しんであげるよ。だいすきだもの。」
泣きそうになるのを必死で堪えて、掠れた声で告げる君があまりにも愛しくて。
大好きだよ。愛してるよ。
そう言って君に口づけをした。
……ばか。ぼくだってだいすきだよ。
君の言葉が小さく部屋に響いた。
最愛の君に口づけを
(「でも、きみはぼくのためにしねるの?」「死ねるよ。もちろんじゃないか。」)
H22.1.1