好き。大好き。世界で一番好き。
 これだけ言っても伝わらないなー、なんて顔では苦笑してても、心の中は真っ黒のどろどろ。
 何で俺だけを見てくれないんだろう。とか、何で俺を好いてくれないんだろう。とか。
 兎に角そう言った表しようのない感情で埋め尽くされている。
 あんたが分かってくれたら、それが一番楽なんだけど。それは絶対に叶わないんだろうな。心のどこかでそう思っている自分がいるのも事実で。

 簡単に譬えるなら、悴んだ指先で物事を進めている感じ。言いようのないもどかしさに襲われる、そんな感じ。
 キスしたいな。とか思ってみたりしても、どうせあの人は俺にはさせてくれない。だって、この気持ちを受け取りもしないんだし。
 無意識の内に唇を撫でている指は、寒い外気のせいで冷たくなっていた。





(春になっても、変わらないかもしれない)





H22.1.23