マフラーを解く手つきはいやに優しくて、本当に愛されてるんだな、と実感したら急に恥ずかしくなった。やっぱり止めて、などと言えるはずもなく、ただただ、されるがまま。一分も経ってないはずなのに、マフラーを解くだけで一時間も掛かったように感じた。早く解いてくれたら良いのに。
首辺りに集まる神経回路を、壊れ物でも扱うかのように撫でられるものだから(事実、そうしてくれないと困ると言えば困る)、好きで好きで仕方なくて、もう涙が止まらなかった。
好きだ、と言葉にしても限界があるし、もうどうしたら良いか分からなくなって、思考回路はフル回転させても答えが出せぬまま。段々ニンゲンに近付いている事が嬉しくて、それと同時にすごく恐ろしかった。泣いてる原因も全然検討がつかない。
好き。好き。とっても好き。愛してるよ大好きだ。
自分に言い聞かせるように言えば、おれも、と一言だけ返ってきた。それが言い様もなく嬉しくて、泣きながら、ぎゅっと抱き寄せた。
たった一言
(それが嬉しくて、愛おしくて、兎に角幸せなんだ)
H22.1.30