お店で見付けて、似合いそうだったから買ってみた。今月はちょっとお財布が厳しいけど、今逃しちゃうよりはずっと良いや。ひよこかうさぎか悩んで、悩んで悩んで悩んだ末にうさぎにした。可愛いな、似合うよ、絶対。
 ふわふわした感触を楽しみながらレジへと持って行くと、店員さんに変な目で見られた。ちょっと、その目はないんじゃない。「プレゼントなんで包んでください」そう言えば、納得したみたいに可愛らしいピンクの包み紙で包んでくれた。小さいリボンのシールまで付けてくれて、思わずありがとうって言いかけた。その言葉は飲み込んで、軽く会釈してお店から出た。夏の空はまだ明るい。

 いつも会うから、今日も会えると思っていたのになぜか今日に限って会えない。シャツの胸ポケットに入れてあるものは、結局萠に頼むしかないかなあとぼんやり考えながら黒板を眺める。訳の分からない数字の羅列を適当にノートに写し取る。よく分からないから萠に教えてもらおう。丁度先生があとは個人で教えあいをしないさいと言ったから、これ幸いと萠に声をかけてみる。
「なあ、これ分からへんねんけど、教えてくれへん?」
「あ? どれだよ。」
「どれが分からへんか分からへん。」
 正直に言っただけなのに、すごくため息を吐かれた。仕方ない、分からないものは分からない。
「だからー、要するにあれだろ、公式にまず当てはめろよ。y=ax+bに。」
 ふんふんと適当な相槌を打つけど、正直全然分からない。
 と、萠の前髪がすごく鬱陶しそうだなと思った。しょっちゅう手で掻き上げているけど、耳にはギリギリ掛からない長さだからパラパラと目の上に被さってきてる。
「なあ、萠。前髪鬱陶しない?」
「え? あ、まあ、結構邪魔だけど。」
 ついでだし渡しといてな、と良いながら胸ポケットを漁る。何の事だか分からないといった顔の萠に「はい」と渡すのは、萌ちゃんにと買ったピン止め。
「むっちゃ似合うわー!!」
 素直に感想を述べたら、なぜかすごく嫌そうな顔をされた。萠にも似合うけど、やっぱり萌ちゃんの方が可愛いんじゃないかな。どれだけ顔が似てても、萠は男の子だし、萌ちゃんは女の子だし。もっと可愛いものつければいいのに、あの子はいつも萠とお揃いしかつけないんだから。



×+

(プラスするものがあやふやすぎるかな)





H22.1.15