俺じゃなくても良いくせに、なんて言われて、否定などできなかった。
 何も言えなくて、何もできなくて。
 そんな俺を見て、やっぱりと呟いたお前は泣きそうな顔で笑う。
 目頭が熱くなったけど、泣く訳にもいかないから必死で堪えた。

 たくさんの女と付き合ってきたし、それこそたくさんの男とも付き合ってきた。
 そこに愛などありはしなくても。
 耳元で紛い物の愛を囁くだけの関係。
 いくらセックスをしたって満たされるものなどなかったし、そもそも最初からそんなものありはしないのかもしれない。

 好きだよ。
 いくら言おうともお前は笑って信じない。
 今までの奴らと同じ意味などではないのに、それさえも気付いていない。
 その笑顔の裏に隠れている涙を、俺は知っていた。





(だからこそ嘘を吐くんだ)





H22.3.24