ゲッソリとした顔を見れば、大抵は驚くだろう。まあ、ケタケタと笑い出す者はいないはずだ。少なくとも、俺はそんな人物に出会った事は一度もない。
 そのゲッソリとした顔が身内の、しかも寝起きに見たとなると驚きは数倍だ。
「お、おいメタル……どうしたんだよ……」
 あまりのやつれ具合に俺が尋ねると、相手は疲れきった目で俺を見て一言。
「徹夜」
 それ以上何かを口にするのでさえもしんどいのか、リビングルームのソファにどかっと腰を下ろして、後は無言だった。
 一応気を遣い、濃い目のコーヒーを淹れてやると、のっそりとカップを手に取り、口へと運んだ。
 そして、俺はそんな様を見ながら、一つおかしい事に気が付いた。
「なあ、メタル。一つ良いか?」
「……手短に頼むぞ。」
「じゃあ単刀直入に聞こう。本当に徹夜か?」
「……」
 昨晩の事を思い起こせば、メタルの仕事は手の空いていたエアーが手伝っていたため、比較的早めに終わっていた。この目で見たのだ。
 量からすれば丸一日掛かりそうなものだったが、エアーが手伝ったために夕方には既に終わっていた。そのお陰で夕飯は少し豪華だった。
「どうなんだ、メタル?」
「……簡単に言うと、徹夜だが仕事ではない。もう良いか? 本気で眠たいんだ。」
「だったら寝てくれば良いだろうが。どうせ今日は俺しかいないんだから。」
 そう、わざわざ起きてくる必要はなかったのだ。他のナンバーズは早朝から各々の任務があった。
「別に良いだろう? 俺がいつ起きてこようが。」
「じゃあ眠いって言うなよ。」
「っ……」
 俺の至極的確なツッコミは結構効いたらしい。
 それにしても、今日のメタルはどこか変だ。でも、理由を聞いても「寝不足だから」って言われてお終いな気がする。
「俺が変だとでも言いたいんだろう。」
「分かってんなら教えろよ。」
「……仕方ないな、耳を貸せ。」





(「お前の事を考えてたら眠れなかった。」「嘘だろ?!」「本当さ。」)





H21.12.26