好きだとか愛してるだとか、そういった甘く優しい言葉じゃないんだ。
外したヘッドフォンから漏れる音が虚しく部屋に響く。
音源であるコンポの電源を切りながら、もう一度考え事へと思考を追いやる。
甘く優しい言葉ではない。
では一体何なんだと聞かれても、俺はきっと正しい答えを出す事などできやしない。
元々そういう奴なのだ、俺は
さて、一つ面白味のない話をしてみようじゃないか。
昔々というにはあまりにも最近すぎる昔、俺は殺伐とした思考というものに魅力を覚えた。
これといった要因などはないのだけれど、その所為で得をした事は数える程しかなく、損をした方が当然多い。
それでも俺がそれを手放さなかったのは、最早それだけしか縋るものがなかったからだ。
切っ掛けなどは重要ではない。要は、どれだけ俺が重要視していたかが重要なのだ。
独り善がりのエゴイズムに浸り、他人を蹴落としながらも気にせず、ぬくぬくと過ごしているような人間にだけはなりたくなかった。
どうせなら、自らをも切り落とせるような人間になってやろうではないか。
日に日に俺を含む世界が崩壊していくのが分かった。
ふと気が付けば、薄暗かっただけの部屋はもう暗闇に包まれかけていた。
そのヴェールから逃れるかのように部屋の電気を点ける。
照らされた殺風景な部屋が、ますます無機質に見えた。
真っ白なシーツの敷かれたベッドに腰を下ろし、壁に背を預ける。
無意識のうちに零れた溜め息は、耳に届くか届かないかというところで静寂に掻き消された。
やはり優しさなどとは程遠い奴なのだ、俺は。
僅かに己を知った瞬間
(自己分析にしては救いがない)
H22.2.23