赤い赤い、とても赤い血のようなその瞳は常に獲物を狙ってギラギラと光る。
それに見つめられると言いようのない感情がゾクリ、と背筋を駆け巡るから、嫌で嫌で仕方がない。
呼吸がし辛くなって、コアはバクバクと煩い。
怖い、とは少し違う。だけど恐怖にとてもよく似たそれは。
愛する事と所有する事は違うのだろうか。
手中に入ったものを全て愛するわけではない。それはそうだ。
愛=所有なのに、所有≠愛だなんて。
必ずしも所有しているからといって愛しているとは限らない。
愛されないなら、所有しなければ良いのに。
私は私だけを愛している。
そう、だったのに。
目の前で眠り呆けているのは、一番嫌いなはずの人。
開けていればキツい眼差しも、閉じていれば皆を何ら変わりはない。
自分とは違う、しかしとても綺麗な睫が縁取る瞳は今は閉じられている。
これだけ近くで目を覗いたら、もしかしたら今までとは違うとても美しい瞳を見れるのではないか。
開ければ良いのに。一瞬そう思って、後は何も考えなかった。
今なら、この人の全てが手に入るかもしれないけれど。
そっと手を握ろうとして、臆病になってやっぱり諦めた。
閉じられた瞳
(拒絶が怖かったのかもしれない。)
H22.1.28