「いつ死ねるのかな。」
 そう言ったお前の口調はひどく穏やかで、発した言葉の内容なんて全くそぐわなかった。
 そもそも死など訪れやしないのだ。機械に死など。
「人間が死んだら死ねるのかな。」
 そうしたら俺を直す事なんか出来なくなる。
 同意を求められてもどうしようもない俺は、そうなる前にいつもの口癖を言う。
「さあな。俺には何も分からないよ。」
 お前はそれを聞いてビスクドールのように端整な顔を不快そうに歪めて不満そうに言葉を吐き出す。
 その様子はどうこからどう見たっていつも通りで、先程の事など遠い昔のようだ。
「いっつもそればっかり。分かってないわけじゃないのに。」
 不平不満をぶつくさと呟くも、俺から何の反応もないのがおもしろくないらしく、結局鼻を鳴らして出て行ってしまった。
 廊下の向こうから聞こえる声は、やはりいつもと何ら変わりはなかった。






(それは世界が果てるときなのかもしれないし、そうではないのかもしれない)





H22.4.16