目を覚ますと、見覚えのある青が目の前に広がる。
 やけに近いな、と思ってから思い出す。
 そうだ、確か、俺が初めて一人で任務をこなしたんだ。
 それでこいつが「ご褒美に一日中一緒にいてやる」なんて言い出して、更には何でも言う事を聞くって言ったんだ。
 俺の方が年上なのに、と思いながらも色々したっけ。
 普段は面倒くさがって相手をしてくれないゲームを二人でしたし、子供扱いして飲ませてくれないお酒も飲ませてくれた。
 キスだってしてくれたし、その先だって、いつもより全然優しくしてくれた。
 軽い腰の痛みを無視して体を起こし、少し上からこいつを見下ろす。
 いつもクイックばかりがかっこいいって言われるけど、俺からしたらこいつの方がよっぽどかっこいい。
 切れ長の目も、低めの鼻も、薄い唇も、全てが完璧なバランスで配置されていると思う。
 頭脳派なのに体力だってあるし、兄としては自慢なのだ。
 でも、俺は周囲から一度だって兄として見てもらえた事がない。
「そりゃ、確かに少しちっちゃくて、少しぶきっちょで、少しワガママだけどさ……」
「自覚あるんじゃねえか。」
 笑いを含んだ、寝起き特有の掠れ声が聞こえてハッとする。
 むっとした表情でじとりと睨み続ければ、大して悪いとは思っていないような雰囲気で返された。
「俺が悪かったよ、オニイサマ。」
「うっさいばか!! どうせ笑うんだろ。好きにしろよ!!」
「はいはい、そう怒らずに。」
 ぎゅっと抱き締められ、耳元で「怒っても可愛いだけだから」と言われて顔が熱くなる。
 真顔でこういう事を言ってのけるから厄介なのだ、この男は。
 腹いせに、薄い唇に自分の唇を押し当てる。
 離すと、ニンマリした顔があって、ムカついたけどやっぱりかっこよかった。



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(「あんたって唇ポッテリしてんのな。」「……悪かったね。」「いや、可愛いから好きだぜ。」)





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